
EUの包装・包装廃棄物規則(PPWR)では、パレットや箱などの輸送包装について、2030年に40%を再使用包装にするという目標が定められています(29条)。同じ企業の拠点間や同じ国内での配送では、原則として100%の再使用が求められます。
一方で、段ボール箱は再使用目標から除外されているほか、日本から輸出する場合の扱いについても欧州委員会のガイダンスで整理が示されています。つまり、外装に段ボールを使うか樹脂の通い箱を使うか、EUの顧客工場へ直送するかEUの物流センターを経由するかによって、必要な対応が大きく変わります。
本記事では、29条の基本、再使用包装として認められる条件、例外、そして日本企業が押さえておきたい物流ルートと外装の選び方の論点を解説します。
出典:EUR-Lex「Regulation (EU) 2025/40」第11条、第24条、第27条、第29条 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj
欧州委員会「FAQ on the Packaging and Packaging Waste Regulation」 https://environment.ec.europa.eu/publications/faq-packaging-and-packaging-waste-regulationppwr_en
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PPWR 29条とは|輸送包装の再使用目標
29条は、EU域内で使う輸送包装などについて、一定割合を再使用包装にすることを求める条文です。対象には、パレット、箱、トレイ、プラスチッククレート、フレキシブル包装などが含まれます。パレット、ストレッチフィルム、ストラップも、対象品目として条文に明記されています。
| 対象 | 再使用の目標 |
|---|---|
| 輸送包装など(一般) | 2030年に40%、2040年に70%(努力目標) |
| 同一企業・関連企業のEU域内拠点間の輸送 | 原則100%(29条2・3項) |
| 同一加盟国内での他の事業者への配送 | 原則100%(29条2・3項) |
29条の対象となる事業者は、2030年を最初の報告年として、原則6か月以内に再使用の状況を当局へ報告することになります。
名宛人は「EU域内で輸送包装を使う者」
29条の義務を負うのは、EU域内で輸送包装を使う事業者です。PPWRの役割でいえば、製品を包装に詰める「充填者」が中心になります。日本の工場で製品を詰めて出荷している会社も、EU域内での包装の使われ方によっては、この条文と無関係ではありません。役割の考え方はPPWRのproducerとは?製造者・輸入者との違いで解説しています。
「丈夫な容器」だけでは再使用包装にならない
PPWRで再使用包装として認められるには、複数回の使用を目的に設計され、繰り返しの使用、荷卸し、再充填、再調整ができ、最終的にリサイクル可能であること(11条)に加え、Annex VIに適合した再使用システムに参加していることが必要です(27条)。
再使用システムには、次のような運用が含まれます。
- 回収の拠点や方法、容器の所有権の整理
- 洗浄・検査・部品交換などの再調整(reconditioning)
- 再投入と記録(トレーサビリティ)
つまり、何度も使える丈夫な通い箱や専用容器を使っていても、回収から再投入までの運用と記録がなければ、29条の再使用実績には数えられません。顧客工場で空になった専用容器が返却されているのか、顧客側で廃棄されているのかによって、再使用システムが成立するかどうかが決まります。
最低回転数やラベルも今後決まる
再使用包装が何回使われる必要があるか(最低回転数)は、2027年2月12日までに委任法令で定められる予定です。また、再使用包装には、材質の表示とは別に再使用包装のラベルが必要になり、2029年2月12日以降(実施法令の発効から30か月後との遅い方)から適用されます。再使用包装のEU適合宣言書(DoC)の保管期間は10年です。
再使用目標から除外されるもの
29条1〜3項の再使用目標には、明示的な除外があります。
- 段ボール箱
- 危険物の内陸輸送に関する指令(Directive 2008/68/EC)に基づく危険物輸送の包装
- 大型の機械・設備・商品向けに個別に設計された包装
ただし、これらの例外に当たっても、リサイクル設計(6条)、包装の最小化(10条)、EPRなどからは免除されません。
パレットのラップ・ストラップは「100%義務」だけが除外
委任決定(Commission Delegated Decision (EU) 2026/429)により、パレット用のラッピングとストラップは、29条2・3項の100%再使用義務からは除外されました。ただし、29条1項の40%目標の対象には残る点に注意が必要です。「除外された」とだけ理解していると、対応が漏れるおそれがあります。今後も同様の追加除外が出る可能性があるため、委任法令・実施法令の動きを継続的に確認することが重要です。
個別設計の包装の例外は使いにくい
製品の寸法に合わせて専用に設計された容器であっても、それだけで「大型機械等の個別設計包装」の例外に当たる可能性は低いと考えられます。欧州委員会のガイダンスは、この例外を大型の機械・設備などの文脈で説明しています。
危険物の例外は輸送構成ごとに判断する
危険物輸送の例外も、業種単位で使えるものではありません。製品に加えて、同梱する乾燥剤や付帯する薬剤・ガスなどを含めた実際の輸送構成ごとに、危険物に該当するかを確認する必要があります。
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日本から輸出する場合の扱い|対象は「最初のEU倉庫」以降
欧州委員会の2026年のガイダンスでは、29条の対象は「EU域内で使用される」輸送包装であり、EU域外から輸入される包装については、輸入・上市後の最初のEU倉庫から最終仕向地までが問題になると整理されています。
| 物流のパターン | 29条の考え方(概要) |
|---|---|
| 日本の工場からEUの顧客工場へ直送 | 29条の追加対応のリスクは比較的小さい。ただし6条・7条・10条・EPRなどは別途評価が必要 |
| 日本の工場からEUの物流センターを経由して各顧客へ | 物流センター以降の専用容器・外箱・トレイなどについて、40%、場合によっては100%のルールが重要になる |
| EU域内の関係拠点から関係会社・同一国内の顧客へ | 100%再使用のルールを重点的に確認する |
日本からEUまでの国際輸送の区間は、29条の直接の対象ではありません。最初のEU倉庫に入った貨物が単一の最終仕向地向けで、開梱や再梱包をしない場合は、そこで再使用包装へ詰め替える必要はありません。一方で、EUの物流センターで保管・仕分けされ、複数の顧客や国へ再配送される場合は、その後のEU域内の区間で対応が必要になります。物流センターやハブは最終目的地とはみなされない点にも注意が必要です。
このため、EUの顧客への直送比率を把握することは、包装の材料を変えることと同じくらい重要な対応になります。
外装の「型」で29条の効き方が変わる
精密部品や電子部品を専用容器に収め、緩衝材とともに外装に入れて出荷する場合、外装の選び方は大きく3つの型に整理できます。どの型かによって、PPWRの効き方が変わります。
| 型 | 構成の例 | 29条との関係 | 主な論点 |
|---|---|---|---|
| 段ボール外装型 | 専用容器、緩衝材、段ボール外箱、パレット | 段ボール箱は除外。パレット・フィルム・ストラップは対象に残る | 専用容器の再生材とリサイクル設計、外箱の最小化、EPR費用 |
| 樹脂通い箱型 | 専用容器、緩衝材、樹脂通い箱(返却運用)、パレット | 再使用実績に数えられる可能性がある | 11条の設計要件と27条の再使用システム、返却物流。使い捨て運用なら7条の再生材35%が正面から効く |
| 金属・専用コンテナ型 | 専用容器、緩衝材・振動吸収ユニット、アルミなどの箱形コンテナ | 高回転で再使用できれば親和性が高い | 7条の再生材率は金属本体には直接適用されない。重量増による輸送コストやCO₂と回転数の比較が必要 |
段ボール外装は有力な選択肢になり得る
現在、プラスチックの通い箱などを外装に使っている場合、段ボール外装に切り替えると29条の再使用目標の対象外になります。輸送包装であれば、材質構成ラベル(12条)も、eコマース向けを除き原則として対象外です。ただし、破損・湿度・振動の条件を満たせることが前提で、段ボールにしてもリサイクル可能性(6条)、包装の最小化(10条)、EPRなどの要件からは免除されません。
反対に、返却の運用が回っている通い箱を、再使用システムとして整えて活用する道もあります。どちらが有利かは、ライフサイクルでの環境影響(LCA)と総保有コスト(TCO)、品質を含めて比較する必要があります。返却物流では、回収、返送、洗浄、検査、紛失、破損、滞留在庫といったコストも発生します。
空きスペースの基準もあわせて確認する
輸送包装などには、2030年1月1日から空隙率50%以下の基準もかかります(24条)。緩衝材で埋めた空間も空きスペースに算入されるため、外装の見直しと同時に、緩衝材の量が製品保護に必要な最小限であることを説明できるようにしておく必要があります。
自社の型と物流を確かめるための問い
自社がどの型に当たり、29条がどう効くのかを把握するには、まず社内と取引先で次の点を確認します。
- EU向け出荷の外装は段ボールか、樹脂・金属の通い箱か
- 空になった専用容器と外装は返却されているか、顧客側で廃棄されているか
- パレット・ストレッチフィルム・ストラップは誰が用意し、EU域内で何回使われるか
これに加えて、出荷ルートごとの直送とハブ経由の比率、空容器の返却実績の記録などを確認していくことになります。調達・物流部門などで確認すべき項目は、資料の部門別チェックリストにまとめています。
2030年に向けた時間軸のイメージ
29条への対応は、包装材の変更よりも、物流と運用の設計に時間がかかるのが特徴です。大まかな流れは次のとおりです。
| 時期 | 主な取り組み |
|---|---|
| 〜2027年 | EU向け出荷を直送とハブ経由に分け、ルート別の比率を把握する。空容器の返却実績が記録されているかを確認する |
| 2028〜2029年 | 回収・洗浄・検査・再投入の運用を設計し、再使用システムとして記録に残す。誰が実施するかを契約で決める |
| 2029〜2030年 | 40%や100%が求められるルートを特定し、対象の包装で再使用の比率を満たす |
| 2030年〜 | 再使用率の報告に備える |
段階ごとの対応事項と、ほかの条文との関係は、資料のスケジュールでまとめて確認いただけます。
よくある質問
Q. 日本からEUへの国際輸送の包装も40%の対象ですか?
A. 国際輸送の区間は直接の対象ではありません。29条が問題になるのは、輸入・上市後の最初のEU倉庫から最終仕向地までの区間です。
Q. 段ボール箱で出荷すれば、PPWRの対応は不要ですか?
A. 29条の再使用目標からは除外されますが、リサイクル可能性、包装の最小化、EPRなど他の要件は適用されます。パレットやフィルム、ストラップは29条の対象に残ります。
Q. 通い箱を使っていれば再使用実績になりますか?
A. 再使用包装としての設計に加え、回収・洗浄・検査・記録を含む再使用システムへの参加が必要です。
Q. EUの物流センターで仕分けしてから顧客に届けています。何か影響はありますか?
A. 物流センターやハブは最終目的地とはみなされないため、そこから顧客までのEU域内の区間で、29条の40%、場合によっては100%のルールが問題になります。
Q. 再使用の状況はいつから報告が必要ですか?
A. 29条の対象となる事業者は、2030年を最初の報告年として、原則6か月以内に当局へ報告することになります。
まとめ
PPWR 29条では、EU域内で使う輸送包装の40%(一部は原則100%)を再使用包装にすることが求められます。丈夫な容器であるだけでは足りず、再使用システムへの参加が必要です。段ボール箱は除外され、日本からの輸出では最初のEU倉庫以降が問題になります。外装の型と物流ルートによって、必要な対応は大きく変わります。
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